遺言で指定できること
・財産、遺産の処分などについて(預貯金、不動産、貴金属など)
・身分について(認知など)
・相続の手続きについて(相続人の廃除など)
遺言で何でも指定できるわけではなく、せっかく苦労して書いても法的に拘束力がないものもあります。例えば、「三女の○○は東京太郎と結婚しなさい」「遺された妻は再婚してはいけない」「私が亡くなったあと、○○と養子縁組する」など、当事者同士の合意が必要な事柄は、遺言で指定することができません。
遺言書とエンディングノートの違い
簡単に申しますと、遺言書には法的効力があっても、エンディングノートには法的効力はありません。財産や身分のことなど、書く内容は同じようでも、効果がまったく異なります。生前にお世話になった方へ財産の一部をあげたいと考え、エンディングノートに書いたとしても、まったく意味がありません。ただし、要件を備えた正式な遺言であれば、財産の一部を相続人以外の人にも差し上げることが可能となります。相続財産や大切な身分関係のことなどは、遺言で残すことをお勧めいたします。
遺言書の種類は3種類あります。
遺言とは、人生で家族に伝える最後のメッセージです。
良い思いもあれば、憎い気持ちも。
法定相続分(注①)通りに分けてもらうのか、あるいは、ある一人に財産を多く相続させるのか。
遺言ではそんな貴方の思いをかなえる事が可能です。
注① 法定相続分
民法900条で定められた法定相続人の相続分は下記のようになります。
①配偶者と被相続人の子供⇒配偶者2分の1、子供2分の1
②配偶者と被相続人の父母⇒配偶者3分の2、父母3分の1
③配偶者と被相続人の兄弟⇒配偶者4分の3、兄弟4分の1
子供、父母、兄弟がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分配します。
例えばこんな事例があります。
・妻に家だけはそのまま残したい。
・愚息には一銭もやりたくない。
・今まで世話になった方に遺産から恩返ししたい。
・事実婚の相手との子供を正式に認知してあげたい。
・遺言執行者を是非やってもらいたい人がいるなど。
貴方の思いを、確実に後世に残すお手伝いをさせていただきます。
※ご本人の兄弟姉妹以外は、遺留分(注2)があります。遺留分を超えて相続したときは、「遺留分減殺請求」の対象になります。
注② 遺留分
民法1028条で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことをいいます。
遺留分の保証対象相続人は、配偶者、子供、父母です。法定相続人の第三順位である「被相続人の兄弟」は、遺留分を保証されていませんので注意が必要です。
遺留分として請求できるのは次のようになります。
・配偶者や子供が法定相続人にいる場合…相続財産の2分の1
・親だけが法定相続人の場合…相続財産の3分の1
自筆証書遺言、民法968条
文字通り、遺言者(遺言書をつくる人)が自筆で書きます。
①全文を自筆で書きます。
②作成した日付を○月吉日などにせず、正確に記します。
③遺言者本人が署名押印します。
【長所】
○作成時の証人は不要です。
○ご本人だけで作成できるので、手軽に作成できます。
○内容が一切、誰にも知られません。
○費用がかかりません。
【短所】
●様式不備で無効と認定される恐れがあります。
●代筆不可、自筆必須なので、手間がかかってしまう。
●紛失したり、盗難される恐れがあり、偽造される可能性もあります。
●遺族が発見できなくなる可能性があります。
●家庭裁判所で検認の上、開封する必要があります(検認前開封で罰則があります)。
加筆、修正、削除する場合など遺言者が自筆で箇所を指摘し、印を押さなくてはならないなど、いくつか決められたルールがあります。何度でも書き直しもできるため、比較的容易に作成することが可能です。しかし、その反面、作成要件に不備があると、せっかく作成した遺言書が無効になってしまったり、また、開封する時には検認(裁判所で開封すること)が必要となり手間もかかります。そして何より気を付けなくてはならないのが、偽造および紛失です。
秘密証書遺言、民法970条
作成した遺言書を公証役場に持っていき、内容を秘密にしたまま遺言書の存在のみを証明してもらうことができます。遺言の内容を誰にも知られたくない場合には、有効な作成方法です。手が不自由な方は他の人に代筆してもらうことも可能です。
【長所】
○本文は自筆でなく、パソコンで作成したり、代筆でも可能です。(ただし、署名は必ず自筆で行い、捺印をする必要があります。)
○内容が一切、誰にも知られません。
【短所】
●様式不備で無効と認定される恐れがあります。
●作成まではご本人だけで出来ますが、封印後に公証役場で証明を受ける分、手間がかかります。
●公証人や証人の費用がかかります。
●遺言者本人が保管するため、紛失の恐れがあります。
また、遺言書が本物か偽物か相続人の間で争うこともありません。しかし、公証人は内容まで確認しないため、遺言書としての要件を満たしていないなど危険もあります。
※実際に作成する時は、書店で遺言に関する本を購入し、参考にして書くか、専門家にチェックしてもらうことをお勧めします。
公正証書遺言、民法969条
公正証書遺言は遺言者の意思を公的な立場から保証してもらえます。また公証人が作成、および、保管もしてくれますので、自筆証書遺言のように偽造、紛失の恐れが無くなる点が最大のメリットと言えるでしょう。また検認手続きも不要です。作成するにつき、費用や手間、および、証人も必要となります。
【長所】
○様式にそって作成するため、不備で無効になる恐れがありません。
○原本は公証役場で保管されるので偽造・紛失の恐れがありません。
○家庭裁判所での検認手続きが要らず、必要時にすぐに開封できます。
○寝たきりや、目が見えない、などお体が不自由な場合でも第三者の専門家により作成可能です。
【短所】
●公証人や証人の費用がかかります。
●内容が、公証人や証人、第三者の専門家に知られます。
遺言の撤回、取消、無効、執行者
①遺言の撤回、取消
作成した遺言は、その遺言の全部、又は一部を取消すことができます。遺言の撤回権、取消権の放棄は認められません。
②遺言の無効
意思能力がない人や、15歳未満の未成年者が行った遺言は無効となります。また、作成方式に違反した場合も同様となります。
③遺言執行
遺言の内容を実現する人です。例えば「A銀行の預金を甲に相続させる」という内容であれば、その手続きを行う人のことです。この遺言執行者は、行政書士などの専門士業に依頼することも可能です。
遺贈と死因贈与
①遺贈
遺贈とは、遺言により財産を相続人ではない人へ無償で供与することをいいます。例えば、姪っ子や親族ではない、個人的にお世話になった人へすることです。包括遺贈と特定遺贈の2種類があり、包括遺贈とは、「遺産の2分の1」とか、「遺産の半分」など割合で示します。特定遺贈は、「○○の土地」とか、「○○銀行の預金すべて」というように具体的に財産を特定します。
②死因贈与
贈与者が死亡すると効力が発生する贈与契約を死因贈与といいます。
Q&A
Q.遺言を書く用紙はどんなものがありますか?
下記の様式と内容が問題なけ得ればノートの切れ端でも用紙として使用できます。
・全文が手書きであること
・書き記した日付が入っていること
・捺印があること
公的な保証力を持たせるためには、家庭裁判所の検認手続きが必要です。
Q.気持ちが変わった時に書いた遺言書が複数あるので困っています。
基本的にすべて遺言書としての効力があります。しかし、遺言内容の対象(者・物)が同じ場合、新しい遺言書の内容が優先されます。例としてまして、土地相続の際に、古い遺言で妻に、新しい遺言では長男に、と記載されていると、日付の新しい遺言が優先されます。
Q.妻はいるけど子供がいない。なるべく妻に遺産を残したい。
遺言書にその旨を書き記し、様式に問題がなければ有効です。しかし、被相続人の直系尊属(親)に配分される遺留分は法的に優先されます。兄弟姉妹には遺留分は発生しないので、遺言書を作成していれば、妻が全財産を相続することになります。
Q.兄弟には相続財産をあげたくありません。何か方法はありますか。
兄弟姉妹には、遺留分はありませんので、遺言で相続させない旨を書いておけば大丈夫です。
Q.公正証書で遺言を作る場合、実印が必要と聞きましたが、自筆の遺言書でも実印は必要ですか。
認印でもかまいません。しかし、実印で押印する方がいいでしょう。実印で押印する場合、印鑑証明書もつけておきましょう。
※当事務所にご依頼されるメリットといたしましては、いざという時の遺言書の使い方、保管方法、書き直しが必要となった場合のことなど、親切丁寧にご案内いたします。
元公証役場事務職員(遺言・任意後見・尊厳死宣言・死後事務委任・債務弁済・離婚給付など担当)が、しっかりお手伝いさせていただきます。
ご質問、ご相談、お待ちしております。