贈与とは
民法では「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償にて相手方に与える意思表示をし、相手方が受諾をすることによって、その効力を生じる。」と定められています。簡単に言いますと、自分の物(車、宝石、その他)を相手方にあげますよ、相手方はもらいますという意思の合致です。友人とお酒を飲んでいて、その友人に対して「明日の朝、100万円あげるよ」と言い、相手方の友人が「ありがとう、いただきます」といったやり取りも贈与契約です。
贈与契約を取消すことはできるか
酔った勢いで友人に対して、「100万円あげる」と言ってしまった場合、この意思表示の取消しはできるのでしょうか。次の朝起きてから、「昨日の話は冗談ね」で済まなければ、100万円支払わなくてはなりません。このような口約束の贈与契約は履行に着手されていない限り、取消すことが可能です。しかし、注意しなければならないのが、書面で交わした贈与契約です。贈与の約束をわざわざ書面で交わし、贈与する人の意思も明確なわけですから、一方的に取消すことが認められてしまうと、贈与を受ける人の期待を裏切ることになるため、原則、取消すことはできません。
死因贈与とは
「私が死んだら100万円を贈与する」「はい、いただきます」というように、贈与する人が死亡したらという条件が付いた贈与契約です。相続や遺贈のように人の死亡を原因として財産が移転するため、贈与税ではなく相続税が課税されます。
負担付死因贈与とは
死因贈与契約に負担を付ける契約です。贈与する人が、贈与される人に対して、何らかの義務や負担を強いることです。例えば、「私が死んだら土地をあげるから、今後の身の回りの世話をしてほしい」「私が死んだら1000万円あげるから、同居して面倒をみてほしい」などといった、負担を付けることができる契約です。贈与する人も面倒をみてもらえるので安心でき、贈与される人も負担の見返りとして将来ある程度の財産をもらえるわけですから、お互いにとって利益が生じます。
負担付死因贈与契約の注意点
- 贈与する財産、負担の内容を明確にする
贈与する財産が不動産の場合、登記事項証明書の記載に従って正確に記載し、預貯金の場合は、「銀行名、支店名、口座の種類・番号・名義人などを明確にしておきます。また、負担の内容も併せて明確にしておかなければ、実際に贈与する人が亡くなったあと、贈与される人が、負担を履行した、しないで相続人間でトラブルになりかねません。
- 執行者を指名する
執行者とは負担付死因贈与契約の内容を実現(手続)する人です。「私が死んだら、○○銀行の預金を贈与する」といった内容であれば、その銀行から預金を引き出したり、名義変更等をする役目の人です。この執行者がいないと、手続きをする際、他の相続人全員の同意が必要となってします場合がありますので、必ず執行者を選任しておいたほうがいいでしょう。
- 税金が少し高くなります
贈与する財産が不動産の場合、不動産取得税が課税され、登記する際の登録免許税が少し高くなります。相続の場合、固定資産税評価額×4/1000ですが、贈与の場合、固定資産税評価額×20/1000です。
遺言を書くことに抵抗があるのであれば
遺言を書かない(書きたくない)理由
- 縁起が悪い
- 遺言を書くほど財産はない
- 家族皆仲が良いので書く必要はない
- その他
負担付死因贈与は契約です。何らかの理由で遺言は書きたくない、ただ、将来の生活に不安を感じていた場合や、自分が死んだ後の財産ついては、しっかり決めておきたい、などとお考えの場合、一度、負担付死因贈与契約をご検討されてはいかがでしょうか。
ご相談、お待ちしております。