遺産分割の準備

相続人を確定させる

被相続人に隠し子がいて、その子を認知していたり、知らない間に養子縁組をしている場合もあります。遺産分割後にそのような事実が出てくると、相続分を変更して遺産分割協議をやり直すことになってしまいます。誰が相続人に当たるか調べる方法は、被相続人の(出生から死亡まで)戸籍を取得して確認する必要があります。

被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得するには、まず被相続人の最後の戸籍を本籍地で取得し、そこから順次さかのぼっていきます。戸籍の読み方に注意したいのが、「転籍」「改製」「分籍」などの記載がある場合です。例として「転籍」と記載されていれば、転籍前の除籍謄本を取得する必要があります。いくつか本籍地が変更になっている場合、その都度、その本籍地の役所で戸籍を取得します。どこの役所に請求するのか、戸籍を読み込めばわかります。戸籍取得の代行のみのご相談もお受けしておりますので、お気軽にお問合せ下さい。

請求の方法

本籍地のある市町村役場の戸籍係で取得します。本籍が遠方で直接取りに行くことが難しい場合、必要な※手数料と返信用封筒を同封して、郵送で請求することも可能です。この場合の手数料は定額小為替となります。この定額小為替は郵便局で購入することができます。何通か請求する場合、少し多めに入れておくといいでしょう。戸籍が送られてくる際、お釣り(小為替)も同封されてきます。

※手数料
・戸籍謄本450円  除籍謄本、原戸籍750円

被相続人(亡くなった方)の遺産を確定させる

不動産、預貯金、株式、債権、動産「自動車、船舶など、骨董品」など遺産目録を作成する。

特別受益や寄与分を確認する

被相続人から生前に贈与を受けていた場合、相続時の遺産に特別受益を受けた額を加えて相続財産とみなします。例えば、子の1人が住宅を購入する際に被相続人から1,000万円の贈与を受けていた場合、この1,000万円を遺産に加えて分割を行います。そして、すでに贈与された額が分割後に引かれることになります。

寄与分とは、被相続人の資産形成に貢献した人や、被相続人の介護などをしてお世話をした人に対して遺産を多く相続してあげることです。

遺言書がないか調べる

神棚、本棚、金庫等に遺言書がないか調べる必要があります。遺言書がある場合、遺言書の規定通りに分割しますが、遺言書がない場合、遺産分割協議で決めるか、民法の規定「法定相続」で分割することになります。公正証書遺言の場合、公証役場でも確認することが可能です。公証役場で調べる場合、被相続人が死亡したことがわかる戸籍と、ご自身(持ち込む人)がその相続人と確認できる戸籍を持ち込めば検索して調べてもらえます。

遺産分割について協議する

誰から言い出しても、誰が主宰してもよい

民法の規定では遺産分割協議を主宰する者について定めておりません。

原則、全員で行うが後日、印鑑をもらう方法でもよい

相続人全員が集まって協議することが理想です。しかし、遠方にお住いの方もいらっしゃるので難しい場合もあります。相続人全員が集まって話し合うことが難しい場合でも、電話などの方法で合意できれば問題ありませんので、中心となる人が後日、相続人全員から署名、印鑑(実印、印鑑証明付)をもらえばいいのです。

遺産の分割は相続人の話し合いで決めてもよい

遺言書に遺産を誰にどのくらい相続させるか定められていても、相続人全員の同意があれば、遺言の内容とは異なる分割も可能です。

話し合いで決まらない場合、法定相続分で分割する

遺言書がなく、協議でもまとまらない場合、法定相続分に従って分割することが望ましい。

相続人 配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
配偶者+子 1/2 1/2
配偶者+直系尊属 2/3 1/3
配偶者+兄弟姉妹 3/4 1/4
相続人になれないこともあります

法律に違反する行為をすると相続欠格となります。

・被相続人を殺害、または殺人未遂を犯す
・殺害されたことを知っていて黙っている
・遺言書を破棄したり、変造する
・詐欺や脅迫により、遺言書を作成させる

相続人の資格を剥奪する

・著しい非行
・被相続人に対しての虐待
・被相続人に対して重大な侮辱を加える

相続財産欲しさに被相続人を殺害したり、自分が有利になるように違法な行為をして刑に処された場合など、法律によって相続権が剥奪されます。また、一方で被相続人を虐待したり、重大な侮辱を加えるなどの行為があった場合、家庭裁判所に対して、あらかじめ相続権の剥奪(廃除)を申出ることも可能です。

相続人がいない場合、財産は国庫に帰属する

相続人が不明であれば、利害関係者、又は検察官が家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を請求します。相続財産管理人が選任されると、その旨を家庭裁判所は官報に公告します。公告してから2カ月以内に相続人が名乗り出ない場合、家庭裁判所の監督のもと、清算手続きが開始されます。清算の際に、債務がある場合、遺産の中から支払われるので、債権者等に対して、2カ月以上(一定の期間)の期間をもうけて、その請求の申出をするよう公告します。そうした手続きを経ても、なお相続人が不明であれば、家庭裁判所は6か月以上(一定の期間)の期間をもうけて相続人を捜すため、官報に公告します。ここでも現れない場合、国庫に帰属することになります。しかし※特別縁故者がいる場合、遺産の一部、または全部が与えられることもあります。

※特別縁故者とは、被相続人と生計を一にしていたとか、被相続人の療養看護に務めたとか、被相続人と特別な関係にあった人のことです。

プラスの相続財産、マイナスの財産

相続財産になるもの

・現金
・預貯金
・株券
・土地
・建物
・自動車
・ゴルフ会員権
・借地権
・借家権
・その他

マイナス財産

・借金
・各種ローン
・その他

合意できなれれば、家庭裁判所へ調停を申し立てる

民法第907条2項で「遺産の分割について、共同相続人間に協議が整わないとき、又は協議することができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる」と定められております。そして調停委員会が当事者から事情を聞き、また、必要に応じて資料等を提出して解決策の提示、又は助言をしてくれます。

<申立てる場所>

相手方の住所地の家庭裁判所

<必要書類>

・戸籍謄本(申立人・相手方・被相続人)
・住民票の写し
・遺産目録
・不動産登記簿謄本
・預貯金等の残高証明書
・その他

詳細は、家庭裁判所へお問い合わせ下さい。

調停では、まず話し合いによる解決がはかられます。通常、調停では家事審判官1名と調停委員2名以上の合議制で話が進められていきます。その場で相続人間の意見が一致すれば、その合意した内容が調停証書に記載されることになります。その調停証書は確定判決と同様の効力があるので、相続人はその決定に従わなければなりません。

調停でも意見が一致しない場合は、審判に委ねることになります。被相続人の財産、相続人の年齢、職業、心身の状態など一切の事情を勘案して、強制的に財産を分割します。

遺産分割協議書を作成する

まとまった協議の内容を書面にする

合意された内容を、書面にして遺産分割協議書とします。

相続人全員が署名、押印して印鑑証明書を添付する

遺産分割協議書は不動産移転登記などで必要になります。遺産分割協議に参加した相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書を作成する理由としましては、どのように分割したか、後日の証拠となります。また、不動産登記をする際にも必要となりますので、将来の紛争を防ぐためにも遺産分割協議書の作成は必須です。

相続税は相続人全員にかかるわけではありません。また納める方法も現金のほか、家や土地と言った不動産で代用することも可能です。相続税を申告する義務が発生するのは、正味の財産が※基礎控除額を超える場合です。

※基礎控除

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

(例)相続人が妻と子供一人の場合  3,000万円+600万円×2=4,200万円

では、誰を相続人の数に含めることができるでしょうか。

・代襲相続人
・認知済みの子
・普通養子(2人まで)
・特別養子
・相続を放棄した人
・その他

相続税の申告

相続財産は、遺産の総額から非課税財産、葬式費用等、被相続人の負債(債務控除)などを引いた額に課税されます。※基礎控除あり

※基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人の人数

非課税財産

・墓石、仏壇、位牌、神棚などの祭祀用具
・葬式の香典、花輪代、弔慰金(一定の額まで)
・公益法人等への寄付金
・その他
※ただし、投資目的で購入した墓石や、常識を超えた香典などは対象外です。

債務控除できるもの

・金融機関からの借入金
・水道、電気、ガスなどの未払金
・施設利用代金、入院費、などの未払金
・各種ローン
・その他

葬儀費用等も控除の対象です。また、火葬埋葬の費用、通夜、告別式にかかった費用も対象ですが、香典返しの費用、墓地等の購入費、四十九日などの法要にかかった費用は控除の対象にはなりません。

申告と納税は10ヶ月以内に行います。

相続人が被相続人に代わって準確定申告を4ヶ月以内に行います。さらに相続税の申告と納付や※延納、又は※物納の申請は10ヶ月以内に行う必要があります。申告、納付をする場所は被相続人が住んでいた住所を管轄する税務署です。

※延納

相続税は相続開始後10ヶ月以内に納めなくてはなりませんが、その期間内に現金等を用意することが難しい場合、税務署の許可を得て分割で納付することも可能です。これを延納と言います。

※物納

現金に代わって、国債、地方債、投資信託の受益商品、不動産などを納付することが可能です。ただし、延納しても金銭納付が困難であると認められなくてはなりません。また物納の許可が出た後でも、1年以内であれば物納を撤回することができます。